エネルギーワークとは何か
ロルフィング®はマッサージではないんですよとお話しすると、「エネルギーワークですか?」と訊かれることがあります。エネルギーワークの定義そのものが曖昧なので、その方がどういう使い方をされているのかを確認してから答えるようにしています。
わたし個人の考えでは、すべてのボディワークはエネルギーへの作用も必ず含んでいます。ロルフィングも同様です。ロルフィングだけが特別というわけではありません。
触れることとエネルギーの伝播
人が人の体に触れたり至近距離にいたりすると、エネルギーの共鳴がおきます。
怒って攻撃的な気分になっている人と、狭い部屋で一緒にいる場面を想像してみてください。
たとえ自分が攻撃対象ではなくても、非常に居心地が悪くて、距離をとりたくなります。
赤ちゃんはもっと素直で、お世話をする人のコンディションや感情の変化にたいへん敏感です。「あの人の抱っこだけは激しく拒否」とか、親が緊張すると同じように緊張するとかもわりとよくあります。
ことばや動作を伴わなくても、誰かの気配や注視されていることを感じとることもありますよね。
これらもエネルギーの共鳴です。
からだに触れるとこの共鳴はとても大きくなります。
ロルフィングのトレーニング中には、体に触れる者はニュートラルポジションに自身の身を置くようにと繰り返し指導されます。「治してあげたい!」という意図を持つこともダメなのです。そういう意図は施術する側のエゴですし、「治したい!」の方向に秤(はかり)が傾いています。それは触られる人のエネルギーに大きく影響します。
とはいえ、エネルギーは目に見えないし、使う人によって定義がかなり異なる語のようです。エナジーといえば電力ですし。
わたし自身がなにを「エネルギー」と捉えているかというと、日本語にしたら生命力がいちばん近いかもしれません。
「生きている」とはどういう状態か
哺乳類の「生きている」という状態は、心臓が動いて脳と肺が機能して、体のホメオスタシスを自力で保っている状態だとわたしは考えています。
大脳が機能しなくなった状態がいわゆる植物状態ですが、それでも心臓は動いています。心臓を動かしているのは心臓にある洞結節という組織です。ここから発信される電気命令によって心筋細胞が動き、ポンプ活動を行ないます。
では洞結節を動かしているものはなんでしょう?
細胞を生かしているものとはなにか
考えてみたら不思議です。細胞を生かしているものが脳でも心臓でもないのは、細胞だけを体からとりだしてシャーレで培養できることからも明らかです。
では細胞を生かしているものはなんでしょう?
ヒトは受精卵から細胞分裂を繰り返し、徐々にヒトの姿になってゆきますが、心臓も脳もまだできていない段階で、なにを動力にしてヒトの細胞は分裂を繰り返せるのでしょうか。
心臓のない生物を生かしているものとはなんでしょう?
こういったことが不思議でたまりませんでした。
頭蓋仙骨療法:クラニオセイクラルの基本となる「第一次呼吸」という考え方をロルフィングのトレーニング中に知り、「エネルギーと呼んでいるものの根源はこれかも!」と思ったのでした。
第一次呼吸とは
第一次呼吸とは、サザーランド博士が発見した、人の体のすみずみにまでゆきわたる微細なリズムのことです。肺でおこなういわゆる呼吸とは別です。心臓の鼓動とも肺呼吸とも異なるリズムで、ヒトの体は、拡張と元のサイズに戻る運動を繰り返しています。(時折、「息と共に脳の縫合に沿って頭蓋骨は動く」と言うエセ・クラニオ的言説を展開している人がいますが、それはまともな当該仙骨療法とはまったく無関係な人です。お気をつけください)
脳は頭蓋骨の中で、脳脊髄液という体液に浮かんでいます。脳脊髄液は、脳から脊髄をとおって仙骨(骨盤の中にある骨)までを巡っています。脳脊髄液が通っているのは硬膜という膜で覆われた通路内なので、事故などでこの通路に穴が開くと脳脊髄液が漏れ出してしまい、脳に影響がでて不定愁訴等をひきおこします。
第一次呼吸は、この脳脊髄液を循環させています。これは胎児の時から始まります。
たぶん、着床した受精卵が細胞分裂を始める時から第一次呼吸は始まっているはずです。
エネルギーと呼ぶもの
それこそがエネルギーと呼んでいるものに最も近いものだとハッと思い当たった時に、わたしの中で、それまで説明しようにもできない漠然としたモノだった”エネルギー”が「これかー!」と腑に落ちました。
たいへん大雑把にいうと、生命の息をふきこむもの=エネルギーという理解です。
世の中には、深遠な理解を持っているたくさんの治療家の方々がいらっしゃいます。そういう方々の見解も聴いてみたいものです。
コメントを残す