ロルフィングを学ぶ前から生物学は好きでした。
遺憾なことに理系科目が壊滅的に理解できなかったので外科医/獣医師への道は早々に諦めました。回り道はしたものの、40半ばを過ぎてから人の体に関わる仕事をするようになり、遠慮なくマニア心を発揮しています。
胎生学
ボディワーカーには、それぞれ好きな分野がありますが(筋肉が好きとか神経が好きとか)、わたしは発生の段階を知るのが好きです。
発生はほんとうに奥が深いです。ヒトの身体を理解する中でとりわけ胎生学(受精卵から胚、 胚から胎児になる段階の身体の発達を学ぶ学問)は重要です。わたしの興味はヒトにとどまらず脊椎動物や無脊椎動物にも及びます。
それらの動物とヒトを比べると、ヒトの特異さがよりはっきりと認識できます。
トドの骨盤はまっすぐで後肢にも趾骨はある

たとえばこれはトドの骨格ですが、足の骨の大きさに目を奪われます。ヒトの足の面積の小ささに慣れていると「後ろ足の面積が広く、骨も大きい」ということにびっくりします。そして我々がでっかい1枚のヒレみたいなものと見ている後肢にも、こんなにも立派な趾骨があり、意外の感に打たれます。
骨盤が縦長なのも目をひきますね。
ヒトの骨盤はボウルのような格好ですが、たいていの哺乳類の骨盤は縦長です。ヒトの骨盤には、内臓が重力にひっぱられて地面へと落ちないように支える役割があるので、ボウル状になっているのです。二足歩行と骨盤の形に関連があるということが視覚で理解できると思います。
シャチの頸椎

こちらはシャチの首の骨(頚椎)です。手前のエリンギみたいな肩甲骨の上に写っている頸椎をみてください。小さく、薄っぺらく折りたたまれてギュギュギュッとなっている頚椎の”異様さ”に目が釘づけになります。
水族館でショーをしているシャチをみていると、頭を上下左右に振ってうなずきの動作やイヤイヤの動作をしているようにみえます。しかし、もしかしてほんとうはシャチは、ヒトのように首だけを上下左右に振ることはできないのか?!と気づいたりします。
進化の過程を再現する発生段階
発生に話を戻すと、発生時に進化の過程を再現していることに神秘の感にうたれます。
たとえば、成体のクジラには歯も骨盤も後肢もありません。それなのに胎生時には一瞬だけちらっと出来ます。そして出生時には歯は消滅し、骨盤や後肢になる予定だった骨は大きく発達はせず、小さい「名残り」程度の骨となって残る。
何百万年もかけての進化の過程を、受精から生まれるまでの間にものすごい早送りで再現しているのです。これはもう、すごい!!不思議!!としか言いようがありません。
600万年の歴史を経た人体の、最新モデルである身体に、いま、わたしは触れている。そう思うと、セッション中に一瞬だけ呆然となるほど不思議の感に浸ってしまうことがしばしばあります。
あなたの身体の素晴らしさをもっと認めてあげてください。
思い通りにならず、時に厄介に感じることもありますが、600万年の人類の軌跡の到達点のひとつなのです。
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