靴は身体を支えるツールです〜足元から整える身体のアラインメント〜

「最近、立ちっぱなしがつらい」
「長く歩くと膝が痛くなる」
「姿勢が悪くなってきた気がする」

40代・50代という年齢に差しかかると、日々の身体の不調がじわじわと表に出てきます。特に、骨盤まわりや膝、腰などの不具合は多くの女性が抱える悩みのひとつです。整体に通ったり、ストレッチを始めたりと、ケアに取り組まれる方も少なくありません。
しかし、そういった方々に、私がまず見直してほしいと感じるのは 「足元」、つまり靴の選び方です。
ロルファー;身体の構造と動作を整えるボディワーカーとしてクライアントの身体を観察してきましたが、実は「自分に合わない靴を履き続けていたこと」が、身体の不調を助長するケースは多いのです。

「歩けるから大丈夫」は危険信号

靴を選ぶとき、どんな基準で選んでいますか?

靴は毎日履くものです。なのに、多くの方が選ぶ際に重視するのは、見た目や履きやすさ、今の足の状態で歩けるかどうかといった主観的なポイントばかりです。しかし、その「なんとなくの基準」で選ばれた靴が、実はあなたの足のアーチを崩し、骨格全体に影響を与えているとしたらどうでしょう。

以下に、よくある靴選びの“落とし穴”を紹介します。

① 幅広の靴=楽、ではない

「足指が当たって痛いから」「きついのはよくないと思って」と、幅広の靴を選ぶ方が多いですが、これは必ずしも正解ではありません。確かに足指が自由に動ける空間は必要です。しかし、全体がブカブカして足が靴の中で動いてしまう状態は、足のアーチ(特に内側縦アーチや横アーチ)をうまく使って身体を支えることができません。

結果として、足底筋膜炎や開張足、外反母趾のようなトラブルを引き起こす原因になります。

② 脱ぎ履きの楽さを重視しすぎていませんか?

スリッポンやサンダル、甲の部分が浅いパンプスなど、つっかけるだけで履ける靴は便利です。その反面で、足をしっかりと固定できないため、歩くたびに足が前滑りしてしまい、足指で「踏ん張る」動作が過剰になります。

その結果、足指の変形やタコ・マメの原因になるばかりか、脚全体の筋緊張を引き起こし、膝や股関節の使い方にも悪影響を及ぼします。

③ 見た目重視の靴、底が硬くて曲がらない?

ブランド物のレザーシューズや、ヒールの高い靴は素敵に見えます。ところが、底が硬くて足裏が自然に曲がらない靴は、足の機能を著しく制限してしまいます。さらに、踵が高すぎる靴は、前重心の癖を助長し、骨盤が前傾しやすくなるため、膝の過進展や腰痛、反り腰の原因になりやすいのです。

最悪な靴の見本みたいな画像です

④ スニーカー=安心、ではない

意外に見落とされがちなのが「スニーカーなら大丈夫」と思い込むことです。たしかに、クッション性や軽さに優れたスニーカーは多いですが、構造的なサポート力がないモデルも多く、かえって足の筋肉の使いすぎやアーチの崩壊を招いてしまう場合もあります。
ちゃんとしたメーカーのスニーカーは、走る用、歩く用など用途によってモデルが異なりますので、用途に合うものを選びましょう。歩くのであれば、紐をしっかり結んで距骨を支えながら履いてください。

足と脚は、身体の「土台」

解剖学的にみた歩行の仕組み

人間の足は、片足で26個もの骨と30以上の関節、100本以上の靭帯と筋肉から成り立っています。これらの構造が、足首より上の体との精密な連携プレーによって「立つ」「歩く」といった基本的な動作を可能にしています。小指一本でも失ったら、歩行に支障をきたしてしまいます。

歩くとき、足はまず踵(かかと)から地面に接地し、次に足の外側を経由して、小指球→親指球→親指の順で体重が移動していきます。このローリング動作がスムーズに行われることで、足のアーチが自然にたわみ、衝撃を吸収し、地面を蹴り出す力を生み出します。

つまり、「歩く」とは、単に前に進む行為ではなく、足が構造的に正しく動いて初めて実現できる全身運動なのです。

足元の崩れは、膝・股関節・骨盤に波及する

もしもこの一連の動作に歪みやアンバランスがあると、どうなるでしょうか?

例えば、足のアーチが潰れてしまっている人は、歩行時に本来吸収されるべき衝撃がうまく逃がせません。その結果、衝撃がダイレクトに膝関節や股関節に伝わり、関節の負担が増していきます。

さらに、足の内側が倒れる「過回内」という状態は、すねの骨(脛骨)や太ももの骨(大腿骨)を内側にねじる力を生じさせます。このねじれが股関節を不安定にし、やがては骨盤の高さの左右差や、関節の痛みを引き起こしていくのです。

これは言い換えると、足元の崩れが身体全体の姿勢や不調に直結しているということを意味しています。

靴を変えることで、身体全体が変わる可能性

しかし、これには希望もあります。
それは、「足元の環境を整えることで、膝や股関節、骨盤の問題が改善されることがある」ということです。

私のクライアントさんの中には、腰痛や膝痛、外反母趾の痛みで悩んでいた方が、正しくフィットした靴を履くことで症状が軽減したというケースもあります。靴の力を侮ってはいけません。

ロルファーが伝えたい、靴選びのポイント

ここで、身体のアラインメント(構造的バランス)を整える靴選びの基本ポイントをお伝えします。

  1. 足のサイズだけでなく「形」に合った靴を選ぶ
     → 足幅だけでなく、甲の高さや踵の形も重要です。専門店でフィッティングしてもらいましょう。百貨店の靴売り場などにいるシューフィッターは、これまでの経験上、あまり信用できないので、やはり専門店がいいです。
  2. 足指がしっかり伸びて動かせるスペースがある
     → ただし、靴の中で足が前後左右に動くのはNG。足指は自由に、足本体はしっかりホールドしてくれる靴が理想です。サイズ(=靴の内部の長さ)はじゅうぶんなのになぜか足指がちゃんと伸ばせないのは特に要注意です。これはプロに見てもらって中敷やインソールでの調整が必要です。
  3. 靴底が適度にしなる
     → 足裏の動きを妨げない、しかし柔らかすぎないソールが理想です。
  4. 踵(ヒールカウンター)がしっかりしている
     → ここが柔らかいと、踵が安定せず足全体がブレやすくなります。しかし、「踵が当たって痛い」ような場合は脛骨と腓骨が足首のあたりで離れ気味になっている可能性があります(股関節や膝関節にチャレンジがある人でよく起こります)。踵に脛骨腓骨の歪みからくるねじれ運動が出るようなら、足首を支えるサポーターを使うのがおすすめです。
  5. ヒールの高さは3cmまで
    → これはファッション面で気に入らない人も多いでしょう。が、もし既に骨盤から足裏にかけて、どこかにトラブルを抱えているのであれば、低めを選んで普段はそれを履いてみましょう。

靴選びについては過去にも書いています。今回は自分の体験をふまえて長めに書いてみました。
私自身も股関節と膝関節に爆弾をかかえる身ですので、靴にはお金をかけ専門店のお世話になっています。歩けなくなったら大変だという一心で、最近は足首サポーターを使っています。ゲートルとか脚半って、先人の知恵の結晶だったのだと実感する日々です。

私がお世話になっている専門店はこちらです。ご興味ありましたらぜひ一足購入してみてください。購入直後の調整(試着時には大丈夫だったのに購入して履いてみたら靴擦れができる、当たってしまって痛い箇所があるなどの原因による調整)は無料で対応してくださいますよ!

パラマウント・ワーカーズ・コープ

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    ABOUT US
    Izume Rika認定ロルファー Certified Rolfer
    40代に入った途端に股関節を傷めてしまい、大学病院で手術を受けたのに杖なしでは暮らせない…そんな状況からロルフィングで普通の暮らしをとりもどしました。自らロルファーとなって2016年4月に東京で開業。小金井市で施術しています。