認定ロルファー™の利香です。
ロルフィング®のセッション時、または私がロルファーであるとわかると、「体がかたいんです」とよく相談されます。ほとんどの人が「体はやわらかいほうがいい」と思い込んでいます。
その「いい」は健康であるという意味でしょうか。
もしそうなら、その「健康」はどんな条件ですか?
健康=元気がある、キビキビ動ける、疲れにくい、病気になりにくい、基礎代謝が高い・・・とかだと思います。
「健康」と言われて思い浮かべる条件に、関節がとてもやわらかいという項目は滅多に入ってきません。それでいいのです。関節がやわらかい=可動域が広いことと、健康かどうかはあまり関係ありません。
180度開脚のリスク
以前、電車内でよく「180度開脚が誰でもできるようになる」という本の広告をみかけた時期がありました。その広告では180度開脚ができたらどんないいことがあるのかには一切触れていないのに、体験談の引用だけで「なんか体にとっても良さそう」「180度開脚したら気持ち良さそう」と感じさせるものでした。そう言う意味で、非常にたくみに作られた広告でした。
180度開脚は、普通の人の日常生活には不要です。90度から100度ぐらいまで開脚できていたら十分です。
関節の可動域には限りがあります。また、骨格・骨の形・背骨のカーブの深さ等には個人差があります。無理やり可動域をひろげようとして骨同士がぶつかったり、靭帯を傷めたりしたのでは本末転倒です。
怪我のリスクがあるような、極端な柔軟性を身につけるのに、トレーナーも付けず、まして本を片手に素人が独断でやるのは無謀です。無理やり開脚して内転筋の付着部を傷めたり、慢性痛を抱えてしまったり、股関節がおかしくなったりしたという例もあります。
自分の骨格の個性を知り抜いていて、かつ、ダンサーやアスリートのように必要のある人だけが、極端な柔軟性を追求すればいいと思います。
「なんとなくよさそう」というイメージだけで180度開脚に挑戦する前に、自分がほんとうに求めていることはなにかを考えてみてください。180度開脚ができるようになったらどんな問題が解決するんでしょう?その問題は180度開脚達成しないと解決できないものなのでしょうか?
おどかすようなことを言うのには、理由があります。
それは、関節には強度と安定性が必要だからだというのがひとつめの理由です。もうひとつは、いちど伸ばしたり切ったりしてしまった靭帯は元に戻らないからというのがふたつめの理由です。
関節の役割は安定して動くこと
関節とは骨と骨とが接している部分のことです。関節する骨同士がばらけないために靭帯などの軟組織が関節をとりかこみ、関節の強度を保ってくれています。また、筋肉は関節をまたいで着いています。筋肉は関節を覆っていて、これも関節を守っています。
関節への負担を減らし安定性をつくりだしている靭帯を、伸ばしてしまったとしたらどうなるでしょう?可動域は上がりますが、安定性と強度は犠牲になります。
関節の可動域が大きいほうがいい体だという価値観は危険です。なんのために関節の可動域が決まっているのかを考えてみてください。それ以上動いたら、関節が壊れてしまうリスクがあるからです。
可動域が大きいことのリスク
関節が不安定になり、足首や膝がゆらゆらと頼りなかったら、その上に骨盤や上半身は安心して載っていられないし、歩く時もバランスが取りにくくなります。
若い頃は筋肉が元気なので、それほどの不自由は感じません。が、怪我や病気、加齢などで筋肉が衰えてきたときに、不安定な関節は弊害だらけです。もしそれが腰から下の関節だったとしたら、歩きが不安定、脱臼しやすい、転びやすいという弊害が生まれてきます。
極端な例ですが、シルク・ド・ソレイユのようなプロ集団に所属していたキャリアもある人が言うには、「歩いていても「あっ 腰椎がやばい」と思って立ち止まることもある。腰椎同士がズレることがある」そうです。
プロとしてステージで活動するのをやめても、いったん広げてしまった可動域は小さくなりません。なぜなら、靭帯は一度伸ばしたら元には戻らないからです。普通の生活をしている人なら、過度の柔軟性は追求しなくても生活になにも支障はありませんよね。
たくさんの健康情報が溢れかえる今、ほんとうに必要なことは何かを判断して、うかつな健康法にとびつかないようにしたいですね。雑誌でも広告でも、とても上手にこっちの劣等感や焦りを刺激してきます。人の劣等感や不安や不満を巧みにつくキーワードのひとつが「体がかたい」、です。
かたくても不便がなくて健康なら十分!ってことを、ぜひ心にとめておいて下さい。
とはいえ、解消した方がいいかたさというものもあります。これについては、日を改めて書きます。
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