身近な人が変形性股関節症を発症したら

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There should be no division in the body, but that its parts should have equal concern for each other.If one part suffers, every part suffers with it; if one part is honored, every part rejoices with it. からだには分裂はなく、各部分は互いにいたわりあう。 もし一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ、もし一つの部分が尊ばれれば、すべての部分がともに喜ぶ。「コリント人への第一の手紙 第12章25−26節」

 どのロルファーにもクライアントの傾向はあると思いますが、わたしのクライアントには変形性股関節症と診断された方が増えてきました。40代から50代の方が主です。その方々からうかがうお話から、「変形性股関節症の患者には周囲の理解と協力は大事!だけど患者本人が周囲に要求を出すことにためらいを覚えている」と強くと感じます。同じように股関節に爆弾を抱えている者として、今日は変形性股関節症について書こうと思います。

変形性股関節症とは

 変形性股関節症とは、臼蓋形成不全や発育性股関節形成不全、老化が原因となって股関節の軟骨部分が減り、痛みや可動域の制限(関節がかたくなる、できない動作がある)、跛行を起こす症状のことです。
 軽度の臼蓋形成不全の場合、無自覚のまま若年期を過ごすことがあります。筋力の衰える中年期以降に股関節に痛みを感じて整形外科を受診し、そこで初めて自分の股関節の関節窩の浅さを知る人も少なくありません。

参考URL 公益社団法人日本整形外科学会ホームページ
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html

変形性股関節症の患者が苦手な動作・できない動作

 長時間の立ち仕事や重労働、重いものの上げ下ろし、階段の頻繁な昇降、走る、踊る、またがる、乗用車の乗り降り、高いところから飛び降りる、しゃがむ、ヒールのある靴を履く、長時間同じ姿勢でいる(椅子に座りっぱなしも含める)といったことができません。とりわけ、脚を内転、内旋させる動作は大腿骨の脱臼のもととなるので禁忌です。
 症状が進むにつれて、床に落ちたものを拾ったり棚の低いところにあるものを取ったりといった「しゃがみこみ運動」、靴や靴下の脱ぎ履き、足の爪を切るといった「足を体に引き寄せる」動作、脚をしっかりあげての歩行、片脚で体重を支えることが特に苦手になります。

変形性股関節症は治るのか

 変形性股関節症を「痛み」と「できない動作がある=機能が損なわれている」のふたつに分けて考えると、痛みを湿布や鎮痛剤、鍼灸やマッサージ、ロルフィングのようなボディワークで一時的または短中期的に減らすことはできます。

 「機能が損なわれている」については、痛みが改善したことで出来る動作は増えても、根本原因である形成不全がなくなるわけではありません。すなわち、大腿骨の脱臼を招くような動作や関節に大きな負荷がかかるような激しい運動ができるようにはなりません。

 その意味では、変形性股関節症は悪化することはあっても自然治癒はしないと言っていいでしょう。傷が塞がったり風邪が治ったりするような形での「自然治癒」はないのです。

人工関節置換手術という手段

 人工関節置換手術を受ければ、軟骨が減って骨同士がぶつかることで生じる痛みはなくなります。荷重関節の骨、軟骨が傷んでいることによる痛みは実に強烈です。あの痛みがなくなるだけで、それに付随して起こしていた筋肉疲労による痛みやだるさも劇的に軽減します。

 リハビリや術後の身体のケアを頑張れば、できなかった動作も再びできるようになりますが、誰もがなんの苦もなくそうなるわけではありません。

 人工関節置換手術後の生活の質を左右するのは、筋力と全体的な健康です。痛みを我慢し続けて人工関節置換手術を高齢になってから受けたのでは、身体は歪み、筋力は落ち、骨粗鬆症やその他の疾病を発症しているリスクが高くなります。
 そのリスクを知っていても人工関節置換手術を躊躇する方も大勢います。また、痛みの度合いと感じ方には個人差があります。軟骨がまだたくさん残っているのに、強い痛みを感じる人もいます。その場合、主治医が人工関節置換手術を勧めることは滅多になく、結果、「痛みが強くて日常の動作にも不便が多いのに人工関節にまだできない」という状態に患者は置かれます。

事実と感情は分ける

 もし身近な人が変形性股関節症を発症した時には、「よくなるよ!」「治るんでしょう?」「また元どおりになるよね」といった言葉は、どうか安易にかけないでください。悪化はしても自然治癒はなく、人工関節置換手術をすぐ受けられる人ばかりでもないのです。

 そして「できないことはできない」「この動作をしたら症状が悪化する」という事実を、単なる事実として理解してください。もし理不尽さや不公平感に基づく怒りを感じるとしたら、それはあなた自身の問題です。患者の問題ではありません。
 全ての仕事(や家事)を患者に代わってあなたがやらねばならないと思い込んでいませんか。出来ることと出来ないことをあなたも明確にしていいのです。そこから、職場環境や仕事の分担をどうするか、家事はどのようにするかといったことを、患者とともに考えていただけたらと思います。

 怒りや不満から、患者にへりくだることを要求しないでください。患者本人は、出来ることがどんどん減ってゆくことに悔しさや不安、悲しみを覚えています。そこに、周囲の人全てにへりくだって申し訳なさそうな態度をとることを要求されたら、追い詰められてしまいます。

 いい関係を保ち続けたいと互いに願っていても、機能的な障害を伴う病変は、関係性に権力関係を招き入れてしまいます。
 これは変形性股関節症に限らず、どんな病気でも・誰にでも起こり得ることです。事実と感情を切り分けて考える癖をつけておく必要性を切に感じます。

セッション6仙骨の解放

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    ABOUT US
    Izume Rika認定ロルファー Certified Rolfer
    40代に入った途端に股関節を傷めてしまい、大学病院で手術を受けたのに杖なしでは暮らせない…そんな状況からロルフィングで普通の暮らしをとりもどしました。自らロルファーとなって2016年4月に東京で開業。小金井市で施術しています。